味取の俵石【みどりのたわらいし】
味取の俵石
味取の俵石
味取の俵石
・香美町村岡区味取
兵庫県下では柱状節理がよく観察できる場所のひとつとして知られています。村岡区の長楽寺には、江戸時代の村岡領主・山名義方(よしかた)公俵石見物の記録も残っています。

 

俵石を運んだ保食命(うけもちのみこと)と姫の伝説

鮎釣りで有名な矢田川の流れる香美町村岡区味取地区。集落を見下ろすように「味取の俵石」は鎮座しています。全体の幅約70メートル、高さ約20メートルと巨大で、近づいて見るとその迫力に自然の神秘を感じることができます。

岩肌は縦の重なりが美しく、柱のようにまっすぐで、断面は六角形となっています。この岩石は十数万年前に付近で大噴火が起きた際に、溶岩が冷え固まってできた玄武岩です。縦割りの柱状節理と平らに割れる板状節理が俵を積み上げたように見えるため「俵石」の名がつきました。ひとつひとつの岩が大きく、まさに「米俵」のよう。まっすぐに伸びている姿は、子どもたちが健やかに育つ過程を表すようであり、とても縁起のよい場所とされています。

そしてここには、俵石にまつわる伝説が残っています。その昔、食物の神である保食命とその姫が力をあわせて俵石を運んでいました。大量に運んだところで姫が「もういくら運んだでしょうか」と保食命にたずねます。保食命はそろばんを使い計算し始めましたが、近くの川の流れる音が大きいため、何度計算し直しても正確な数が分かりませんでした。「川水ども静かにせよ」と叫ぶと川音はピタッと止みましたが、それでも正確な数は分かりません。姫は、正確な数も数えられないような不甲斐ない男に連れ添っていてはいけないと、保食命を置いて去っていってしまったそうです。この時に二人が運んでいた石が俵を積み重ねたように見える「俵石」となり、保食命が川音を止めた川を音無川と呼ぶようになったと伝えられています。