なんじゃもんじゃの木 |
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木の力に翻弄された恋心豊岡市但東町佐々木の佐々伎神社に生えている「なんじゃもんじゃの木」は、撫でると愛情が芽生えると言い伝えられています。若者には恋人ができると噂されており、その力に翻弄された、とある娘の悲恋の物語が残されています。 その昔、京の都に娘が住んでいました。偶然道を訪ねてきた若く美しい公家に一目で恋に落ちましたが、公家は但馬の佐々伎神社に勅使として代参するといいます。娘は「帰ってくる」という公家の言葉を信じて待っていましたが、堪えられなくなったある日、とうとう後を追って旅立っていきました。その時代の娘一人旅といえば、過酷さは並大抵のものではなく、大きな峠をいくつも越え、足の血豆は破れてしまうほどでした。 やがて、峠一つを残す谷までたどり着いた娘は、自分に会うために帰路に着くであろう公家を迎えるため、毎日峠を見上げて待っていました。しかし、彼が通る気配はありません。それもそのはず、代参中、好奇心から「なんじゃもんじゃの木」に触れた公家は佐々伎神社の巫女と恋に落ち、そこで結婚してしまっていたのです。噂でそれを知った娘は、一人泣きながら都に帰っていきました。それ以降、娘が恋心を募らせた谷は「こころ谷」と呼ばれ、すれ違いが生んだ、悲しい恋物語が語り継がれています。
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