ミツガシワ

ミツガシワ
・県指定天然記念物
・養父市鉢伏高原
●澄んだ水があふれる湿地に群れ咲く白い花
カシワの葉に似た3個の小さな葉がミツバのようについているところから、「ミツガシワ」の名がついたといわれ、水の中から20~50cmの茎をすっくと伸ばして、先端に小さな白い花をたくさんつけます。白く小さな花びらの内側には、白い毛がたくさん生えている不思議な花です。池や沼の岸辺の湿地に群生する、多年生の抽水植物(浅い水に生活し、根は水底にあって、茎・葉を高く水の上に伸ばす植物)で、清らかな水にしか育ちません。花が咲くのは5~7月、地下茎は1cm近くもの太さがあり、縦横無尽に走っています。中国では葉を乾燥したものを睡菜、または瞑菜といって、睡眠薬としました。苦味配糖体メリアチンを含み、古来から健胃・解熱・駆虫などの薬に用いられてきました。

●氷河時代から生き残った貴重な植物
ミツガシワは、北半球の寒い地域に広く分布し、日本でも東北地方から北海道にかけては普通に見られますが、近畿地方以西ではごく少なく、点々と分布しています。はるか昔に、氷河とともに南下してきた植物の子孫が生き残ったもので、氷河時代の遺物として貴重な植物です。
但馬では、養父市鉢伏高原の北東部に通じる広域基幹林道にかかる道の脇、数軒のロッジが並んでいる近くの湿地に生息しています。2カ所の自生地があり、1カ所は個人所有地、もう1カ所は集落所有地で、1982年に県の天然記念物に指定されました。県内ではここにしか自生していません。しかし、周辺が開発されるに従って、ミツガシワの群落の面積は縮小してきています。猛暑で湿地が乾燥することもダメージを与えます。危機的な状況にあるミツガシワを守るには、絶えることなくきれいな水を与えることが大切です。