ブナ原生林【ぶなげんせいりん】

ブナ林

冬のブナ林
小城のブナ原生林
・県指定天然記念物
・香美町村岡区山田、小城
●ブナ林は、自然の豊かさのバロメーター
代表的な落葉広葉樹林であるブナ林は、自然の豊かさを知るバロメーター。ブナの森は低木や草木など、いろいろな植物で形成されています。日本では、北海道の西南部、関東地方以北の東北地方全域、中部地方以南の山地の上部がブナ林帯になります。兵庫県では太平洋側では標高約800m、日本海側では標高約350mあたりからブナが分布しています。但馬などの日本海側は「ブナ―チシマザサ型」と呼ばれ、チシマザサ(これの子どもがスズコ)、ヒメアオキ、ヒメモチ(ともに常緑の低木)、ヤマソテツ(シダ)などで構成されています。
ブナは、およそ100年前後で15~20mになり、最大で高さ35m前後、直径1.5mに達します。数百年の歳月を経て成長したブナの大木は、地下深く根を張り、年々の落ち葉を積み重ねて30cmを越える腐植層をつくり、その中にたくさんの動植物を育んでいます。ブナ林はすぐれた保水力をもっています。土の中の水分はゆっくり時間をかけて清水となって湧き出たり、渓流に流れ出たりして一定に保たれており、積雪や豪雨が襲っても、一気に川に流れ込むことがなく、麓の人の暮らしを洪水から守り、干ばつの時には豊かな地下水を供給してくれます。広大なブナの原生林は、ツキノワグマ、ニホンジカ、ニホンザル、イノシシなど多くの動物の住みかとなり、豊かなエサを与えます。
●ブナの原生林が守っていたもの

しかし、昭和40年代、全国的に大型機を導入してブナを伐採し、スギやヒノキの植林が進みました。但馬も例外ではありません。現在、但馬には伐採をのがれたブナ林が、大屋、美方、村岡、関宮、温泉、日高などに点在していますが、多くは見本林的なもので、本来の姿はありません。そんな中で、日高町万場の谷の奥には、胸高幹まわり6.15m、根本幹まわり5mという全国2位のブナの巨木が、香美町村岡区萩山の一二峠にも県下最大級のブナがあります。
香美町村岡区小城のブナ原生林は、1968年に、県の天然記念物に指定されました。
開発によってブナのなくなった山は保水力を失って、豪雨の際に山崩れを起こし、住みかやエサを奪われた動物が人里に出没するようになるなどの悲劇が起こっています。長い時間をかけて徐々につくられた原生林の環境を取り戻すには、100年単位の長い時間が必要です。