●山岳修験道の行場として栄えた日本三大権現のひとつ
ブナやシャクナゲが群生する香美町香住区の三川山は、古来より山岳修験道の行場として栄えた古霊場です。 修験道の開祖といわれる役行者(えんのぎょうじゃ)が674年に蔵王権現を勧請して開いたと伝えられています。 三川権現は、 大和の大峯山、伯奢の三徳山と並び、日本三大権現に数えられ、かつては歴代の国主、諸公をはじめ一般の人々の信仰も篤く、隆盛を極めていました。
しかしふもとにある三川権現社は、天文7年(1538)、雷火によって奥の院を焼き伽藍を焼失します。その後一時再建されますが、天保3年(1832)に但馬有史以来といわれる山津波(土石流)によって全ての建造物を流失、埋没してしまいました。
出石城主仙石氏や村岡城主山名氏らが再興を計り、高野山大僧正と信徒らが蔵王堂を再建して、現在の三川権現社があります。
現在、5月3日の山開きには全国各地から山伏や行者が集まり、三川権現蔵王堂前で盛大な護摩供養が行われます。「知恵の火で煩悩を焼く」という護摩供養は、積み上げた護摩木に火をつけ、参拝者が願いを込めた小木を炎の中に投げ入れるという火の祭で、家内安全や海上安全、無病息災など所願の成就が祈られます。
また、三川権現には「ぽっくり尊」という、老いてから大往生できるという仏様も祀られています。苦しみを身替わりに背負ってくれるという代苦仏です。さらに全国観音霊場(四国、西国、板東、秩父の合計188ケ所)のお砂文があり、ここに来れば一度に巡ることができるようになっています。
今も修験道の地として知られる三川権現、近年は年間を通して多くの参拝客が訪れています。 |