2011/06/22  

長楽寺の散り椿【ちょうらくじのちりつばき】

 

長楽寺の散り椿【ちょうらくじのちりつばき】

長楽寺の散り椿
・県指定天然記念物
・豊岡市日高町上石
●花びらが散ると一面赤い絨毯を敷き詰めたように美しい
豊岡市日高町上石の長楽寺境内には、樹齢500年のツバキがあります。秀吉に攻略された時、戦死者の霊を慰めるために植えられたと伝えられるものだそうです。

根まわり1.9m、樹高約7m、枝張りは東西約11m、南北9m。推定樹齢500年の古木ながら樹勢は旺盛で、3月半ば~4月末には、紅にわずかに白斑のまじった八重中輪の花をつけ、花びらが散ると、一面 に赤い絨毯を敷き詰めたように美しいことで知られています。一般のツバキは花全体がポトリと落ちますが、長楽寺のものは花弁の数が20枚近くあり、花びらが別々に落ちるところから「散り椿」の名がつきました。1978年、県の天然記念物に指定されています。

このツバキは、花弁のほとんどが離生する性質や、新葉の裏面にまれに長毛があり、葉形がわずかに小型であることなどから、サザンカが浸透交雑した品種の可能性もあるということです。

2011/06/22  

白藤神社の大モミノキ【しらふじじんじゃのおおもみのき】

 

白藤神社の大モミノキ【しらふじじんじゃのおおもみのき】

白藤神社の大モミノキ
・県指定天然記念物
・豊岡市吉井
●樹齢約800年、兵庫県下最大のモミの木
豊岡市吉井・白藤神社の大モミノキは、樹齢約800年と推定される兵庫県下最大のモミの木。神社の石段を上がった境内の左手にあるこのモミの木は、根まわり17.25m、幹まわり5.5mという巨木です。先端部分は落雷により傷んだため切除されましたが、枝張りは南北18.3m、東西17.7mとその樹形は立派なもので、樹勢はまだまだ衰えていません。

白藤神社は奈佐川沿いの吉井地区にありますが、管理は1キロ以上上流の大谷地区にあります。これはその昔、奈佐川が大洪水の被害にあったときに、大谷地区に元々建っていた白藤神社が流されて、現在の場所へ漂着したといわれています。
神社の周囲には、シイ、カシ、ケヤキなどの古木が生い茂り、境内には大モミの種子から芽吹いた若いモミも見られ、地区の人からは神社のシンボルとして親しまれています。

2011/06/22  

栃が谷平のアスナロ群生【とちがやなるのあすなろぐんせい】

 

栃が谷平のアスナロ群生【とちがやなるのあすなろぐんせい】

栃が谷平のアスナロ群生

・県指定天然記念物
・豊岡市日高町稲葉

●西日本唯一のアスナロ群生地
豊岡市日高町を流れる稲場川の支流、栃が谷平川沿いの山の北西斜面にアスナロ群生があります。標高550~650mの辺りに約7haにわたって群生地が広がっています。

比較的なだらかなところでは、ブナ、ミズナラなど数種の落葉樹や天然のスギが混生し、それらの間に散在しています。また、50度近い傾斜のガケ地のようなところでは、ツクシシャクナゲ と混生し、トチノキ、サワグルミ、カツラなどのトチノキ群落と近接しています。全国各地に自生しているアスナロですが、このようなアスナロ林は全国的にみても珍しいといいます。
アスナロは「明日はヒノキになろう」の意が語源であるといわれる日本原産の木です。ヒノキの仲間で、うろこ状の小葉は最も大きく、一見シャモの脚の皮のように見えます。苗木植栽後、10年ほどは生育が遅いですが、その後は盛んに成長し、高さ30m、胸高直径60cmくらいになります。建築材、橋梁材、家具材、漆器木地などに利用され、耐水性ではヒノキに優るといわれています。
兵庫県ではこの地域のみにアスナロが分布しており、昭和43年(1968)に県の天然記念物に指定されました。

2011/06/22  

ヒヌマイトトンボ

 

ヒヌマイトトンボ

黄緑色の地に黒の斑紋があるオス

メスはオレンジ色
●世界で唯一、海水と淡水が混じる汽水域にすむトンボ
「ヒヌマイトトンボ」は海水と淡水が混じる河川敷や沼、潟の葦原などの湿地に生息する、世界的にも珍しいトンボです。
名前の「ヒヌマ」は、1972年に新しい種として発見された茨城県の涸沼(ひぬま)からきています。その後、宮城から大阪までの太平洋沿岸と、長崎の対馬など、20数カ所でも見つかりました。日本の固有種と見られていましたが、香港でも確認されたとか。
成虫の体長は約3cm、細くて小さいトンボで、オスは黄緑色の地に黒の斑紋があり、メスはオレンジ色をしています。ヒヌマイトトンボも全国的に数が減り、絶滅危惧種となっています。

●葦が茂る円山川の河口は貴重な環境
本州では太平洋側にしかいないとされていましたが、1992年6月、豊岡市城崎町桃島池の葦原で発見されました。このあと、豊岡市の玄武洞や、豊岡市城崎町の楽々浦、菊屋島でも生息が確認され、現在この4カ所が生息地とされています。7~8月ごろ、葦の茎や周辺の草原などで、かなり多く見つけられます(茂みの中にいると、しゃがみこんで目を凝らさないとわかりません)。

太平洋側の生息地で護岸工事が進み、生息が危機的な状態にある中、但馬の生息地は環境が良く、たくさん棲んでいるようです。しかし、このような環境がかろうじて残っているのは、この4カ所だけといえるのかもしれません。

2011/06/22  

ハッチョウトンボ

 

ハッチョウトンボ

ハッチョウトンボのオス

ハッチョウトンボのメス
●体長は1cmあまり、日本一小さなトンボ
日本に生息するトンボの仲間では最も小さく、体長は2cmにも満たず、後の羽の長さも1.5cmぐらいしかないので、よく見ないとトンボだということがわかりにくいくらいです。
一般にはミズゴケやモウセンゴケ、サギソウなどが生えている、日当たりのよい、湧き水のある湿地にいます。オスは成熟すると真っ赤になり、メスは黄色と茶色の縞模様で、一見するとヒラタアブのように見えます。
但馬では、低山地の谷間などに小規模に生息しており、一般に5月下旬~8月中旬ごろまで見られますが、遅いものは9月に入っても見られることがあります。
数少ない生息地のなかで、養父市大屋町加保坂湿地は、但馬では最も標高の高い生息地。平野部では、豊岡市内で1983年に17カ所の休耕田で発見されました。しかし10年後の調査ではそのうちの3カ所でしか見つからず、やはり開発が原因ではないかと考えられます。デリケートなトンボなので、ほんのちょっとした環境の変化によって、すぐに絶滅してしまうのです。ほかに朝来市和田山町でも水田跡の湿地で生息が確認されています。

小型で飛翔力の乏しいこのトンボが、どのように休耕田に分布を広げているのかは、よくわかっていませんが、縄張り行動の研究によると、オスには縄張りをもってメスを待つものと、草の陰に隠れて縄張りの主がいない間にメスを横取りするものの、2タイプがあると報告されています。

2011/06/22  

ヤイロチョウ

 

ヤイロチョウ

美しい色彩のヤイロチョウ
●声はすれど姿は見えず、極彩色の渡り鳥
ヤイロチョウは「八色鳥」と書きます。夏の渡り鳥で、極彩色ともいえる派手な色をしており、「ホホヘン、ホホヘン」と鳴きます。但馬では30年ほど前から、この鳴き声で知られていましたが、山の茂みの中にいるので、めったに姿を見かけることはなかったそうです。
それが1993年6月に、豊岡市竹野町で見つかりました。民家の窓に当たって畑に落ちたところを保護されたもので、見つけた人もその美しさに驚いたということです。この年は渡来数が多かったのか、養父市八鹿町石原の山、来日岳、竹野谷などでも鳴き声が確認されたそうです。

2011/06/22  

ギフチョウ

 

ギフチョウ

ギフチョウ
 

●関連情報
ギフチョウ研究会

●春の訪れとともにあでやかに舞う、春の女神
明るい黄色と黒の縞に、赤とブルーのすそ模様をひるがえし、花から花へ舞い飛ぶようすは実にあでやか。ようやく訪れた春、ソメイヨシノの開花とともに現れるギフチョウは、誰が名づけたのか、「春の女神」の名にふさわしい美しいチョウです。
日本特産のチョウで、本州のみに生息しています。アゲハチョウの仲間ですが、やや小型。兵庫県下にも生息地は多くありますが、各地とも環境の悪化や乱獲もあって個体数の減少が目立ち、絶滅したところもあります。
但馬では、扇ノ山、妙見山、三川山などの山地から、豊岡市内の妙楽寺、愛宕山、大師山などの低山地まで、広くあちこちで見られますが、これも徐々に減少の傾向をたどっています。

●落ち葉の下で10ヶ月も眠って、春を待ちます
ギフチョウの幼虫は「カンアオイ」という植物の葉を食べて成長します。このカンアオイは、クリやコナラなど落葉樹の林の日陰に生育する植物で、もともと繁殖力が弱いうえに、落葉樹の林が杉やヒノキの植林に変わったり、ゴルフ場、宅地などの開発によって環境が変化すると、簡単に減ってしまうのです。そうしてカンアオイが減っていくことが、ギフチョウの減少した大きな原因と考えられています。
ギフチョウの成虫は山の尾根すじや山頂で見かけることが多いのですが、これはほとんどオス。メスは山すそや林道などの日だまりで、レンゲやツツジの蜜を吸っているのを見かけます。
4月下旬、カンアオイの葉の裏をめくると、直径1mmほどの真珠色の美しい卵が5~10個、かたまって産み付けられているのが見つけられます。卵はしだいに黒ずんで、産卵から2週間ほどでふ化します。真っ黒でビロードのようなツヤをもつ幼虫は、約1ヶ月間に脱皮を4回くりかえしてサナギになります。サナギはこのあと、夏~冬まで10ヶ月もの間、落ち葉の下で眠り、翌春を待って飛び立つのです。

2011/06/22  

モリアオガエル

 

モリアオガエル

モリアオガエル

モリアオガエルの卵
 

●関連情報
日本のカエル

●梅雨になると産卵場に集結、メスをめぐって争奪戦
5~6月ごろ、木の枝に、白い泡状の卵を産みつけることで有名なカエルで、背中には緑色の地に紅褐色の斑紋があります。
地域によっては天然記念物として保護されており、但馬の各地にも広く分布していますが、そのわりに目にすることが少ないのは、普段、山地の木の上で生活することが多いから。産卵期以外はあまり人目につかないようです。
モリアオガエルは産卵のため、梅雨の時期になると、近くの林から池や水たまりの上に張り出した木を目指して集まってきます。そうして周囲が暗くなったころ、産卵場となる木の枝に登ります。木の枝に陣取ったオスは「クックックッ」と鳴いてメスを誘い、メスが近づくと、メスの背中に乗って、産卵に適した枝先まで移動します。このとき、ほかのオスたちもメスを奪おうと飛びついてきます。産卵場所に着くと、背中に乗ったオスは、メスの腹部を絞るようにしてゼリー状の粘液と卵を出させ、後足で粘液をかきまわして泡状にするのです。こうして枝に産み付けられた卵は1~2週間でふ化し、オタマジャクシは、枝の下にある池や水たまりに落ちて、夏ごろには小さなカエルに変態していきます。

2011/06/22  

オオサンショウウオ

 

オオサンショウウオ

オオサンショウウオ

・国指定特別天然記念物
(場所は不特定)

●世界最大の両生類、世界でたった3種の貴重な生物
「生きた化石」といわれるオオサンショウウオは世界最大の両生類で、カエルやイモリの仲間です。その発生は2億年前にも遡りますが、ヨーロッパでは氷河期を経てほとんどが滅び、現在地球上では、日本、中国、アメリカで、わずか3種しか残っていないという貴重な生物です。アメリカのものは「ヘルベンダー」(地獄に向かう人)と呼ばれ、大きくて70cmほど、中国のものは「ワーワーユイ」と呼ばれ、150cmほどになるそうです。

●但馬では身近にみられる特別天然記念物
オオサンショウウオは、山間の清流のくぼみ(穴)などを好んで棲み、小魚・サワガニ・カエル・水中昆虫などをエサにしています。夜行性で、昼間は岩の下や川岸の巣穴にひそんでいて、暗くなると川の中に出てきます。大きさは一般に40~120cmで、160cmに達するものもあり、体の色は黒褐色で黒い斑紋があります。皮膚に多くのイボがあって、これを刺激すると山椒(さんしょう)のような香りの乳白色の液を出すところから、サンショウウオの名がついたようです。
アンコ、ハンギ、ハンザキとも呼ばれ、半分に裂いても死なないほど強い生命力をもつとか、食いついたら雷が鳴るまで放さないなどとも伝えられ、不老長寿の食べ物として用いられたこともあったとか。
産卵は9月ごろにおこなわれ、40~50日でふ化。ふ化した幼生は、4~5年で25cm前後になり、このころエラがなくなって変態が完了します。寿命ははっきりしませんが、60年以上も生きた例が報告されています。

兵庫県では但馬・丹波などのほとんどの河川の上流部に生息していることがわかりました。但馬では円山川、大屋川、八木川、出石川、竹野川など、どこにでもいる身近な生き物といえるでしょう。オオサンショウウオが棲むには、エサとなる生き物が豊富で生態系が保たれ、川岸に住みかとなるくぼみや奥行きのある産卵巣などが必要です。平成2年から6年間かけて行われた養父市建屋川の治水工事では、オオサンショウウオの生息と治水を両立させるため、全国でも初めてのさまざまな取り組みがおこなわれました。

但馬の地形概観【たじまのちけいがいかん】

 

但馬の地形概観【たじまのちけいがいかん】
近畿の北西部にある但馬は、中国山地の東端にあたります。兵庫県の最高峰・氷ノ山からは南東に山並みが続き、これらの山々に端を発する川が日本海にそそいでおり、山すそが海に落ち込んだ海岸部は断崖絶壁が多く変化に富んでいます。

宇宙から見た但馬地方

●山地
但馬の山地は、中国山地の東側にあたる中央高地から北へのびて日本海に達しており、その形成過程によって3つの型に分類されます。
1つは、約2000万年前に形成された厚い地層・北但層群が河川の浸食で削り取られ、深い谷によって分断された山地で、谷は深く刻み込まれていますが、尾根の部分はなだらかです。但馬山地の中央部を南北に走り、円山川、矢田川の分水界をなしている妙見山(1,142m)、蘇武岳(1,074m)、三川山(888m)などの連山がこれです。
2つめは、北但層群を突き破る噴火によって、その上にさらに溶岩流がおおいかぶさって、いっそう高度を増したもの。県下最高峰の氷ノ山(1,510m)、瀞川山(1,039m)、扇ノ山(1,310m)などで、兵庫の屋根といわれています。神鍋山(477m)もこれで、溶岩流にともなう溶岩崖、溶岩コブなど典型的な火山地形をとどめています。

3つめは、北但層群におおわれていたところが、その後の隆起・浸食作用で削り取られて基盤岩が露出し、さらに河川によって深い谷が刻まれたもので、高竜寺岳(697m)などがあります。

また、但馬山地の中でも、火成活動を受けなかった地域(おもに八木川以南の古生層)は、長い年月の間に風化が進み、山頂まで植林がなされて美林をつくりだしています。

●平地
但馬の平地は、円山川沿いに豊岡盆地があるほかは、日本海へそそぐ竹野川、佐津川、矢田川、岸田川の河口近くに沖積平野(ちゅうせきへいや)があるくらいです。豊岡盆地は豊岡市を占める沖積平野で、円山川と出石川の合流点付近で一番広く、幅4kmぐらい。玄武洞以北では円山川の両岸に山がせまり、平地はほとんど見られません。

円山川以外の河川は短小なので、新しい山地が削り取られてできた狭い谷底平野だけが形成されています。

●河川
但馬のおもな河川としては、東から、朝来市生野町円山に端を発する円山川、三川山を源とする竹野川・佐津川、氷ノ山から流れ出る矢田川、扇ノ山を源とする岸田川などがあります。

●海岸
日本海に面する但馬海岸は西端の浜坂町居組から、東端の豊岡市津居山まで直線距離で40数km。この地域一帯の海岸は、1963年、山陰海岸国立公園の指定を受け、景観の美しい海岸として知られています。スケールの大きい沈降海岸で、海に落ち込んだ山々の屋根の部分が岬・鼻の突出部となり、谷の部分に海水が入り込んで湾となり、漁港や浜になっており、小刻みに急に入り込む典型的なリアス式海岸です。